歯周病治療
歯周病とは
磨き残しなどによって口腔内に細菌が増えると、歯垢が形成されます。歯垢は別名「プラーク」とも呼ばれ、歯肉の周りに炎症を引き起こします。これが歯周病のはじまりです。歯周病は放置すると歯茎の腫れや出血、歯のぐらつきなどのトラブルを引き起こします。最悪の場合、歯が抜け落ちることもあるのです。歯周病の予防には、毎日の適切な歯磨きと定期的な歯科医院でのクリーニングが欠かせません。
歯周病の原因
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歯並びが悪い
歯並びが整っていないと、ブラッシングの難易度が高くなります。どんなに時間をかけて歯を磨いても、整った歯並びをお持ちの方に比べると、歯垢を取り除くことが難しくなります。まったく歯ブラシが当たってない箇所は磨けてないのと同じことなので、2〜3日で歯垢は歯石になり、歯周病リスクが高まります。
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口呼吸や歯ぎしり
唾液には、お口の中を水分の保った状態にすることで、歯周病菌を排除する作用があります。しかし、口呼吸が続くと、口腔内が乾燥し、唾液の効果が失われて歯周病リスクが高まります。また近年は歯ぎしりも歯周病を加速させる一因であることが明らかになってきました。歯に過度な負荷が加わると、歯肉や歯周組織の炎症が生じやすくなるのです。
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喫煙習慣
喫煙者は、歯周病のリスクが高く、治療も難しい傾向にあります。その理由として、タバコの煙やその成分は、粘膜や歯肉への酸素供給を妨げてしまうからです。結果的に歯周ポケット内の歯周病菌の増殖を促してしまいます。そのため歯周病予防には、喫煙量を減らすこともセットで考えなければなりません。
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ストレスや生活習慣
歯周病は歯周病菌によって炎症が起きる疾患です。つまり細菌による感染症なので、私たちの免疫と関係しています。仕事や家事でストレスが蓄積したり、不規則な食生活を続けたり、糖分の多い食事ばかり摂取したりすると体の抵抗力が低下し、歯周病リスクは高まります。健康な生活を続けることは、歯周病予防にもつながります。歯周病がなかなか改善しない場合は、一度生活習慣を見直すようにしましょう。
全身疾患の
関係性について
歯周病菌は、口腔の粘膜から血流に侵入することがあります。そして炎症性物質であるサイトカインが血管を通じて体内に広がると、全身の健康に悪影響を及ぼす可能性があるのです。特に重度の歯周病の患者様は、糖尿病、心筋梗塞、心内膜炎、脳梗塞、誤嚥性肺炎、早産や低体重児出産のリスクが高まると言われています。つまり歯の健康を守り続ければ、全身の健康も維持する効果が期待できるのです。
- 糖尿病
- 心筋梗塞、心内膜炎など
- 脳梗塞
- 早産および低体重児出産
- 誤嚥性肺炎
歯周病の進行度
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Step01
歯肉炎
歯ぐきに炎症が起きて、赤く腫れている状態です。「歯周ポケット」が3mm以内。歯垢や歯石を取り除くことが大切です。
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Step02
軽度歯周炎
歯を磨いていると出血することがあります。歯周ポケットの深さは3mm以上~5mm以内です。歯周ポケットのなかに歯垢や歯石がたまりやすくなるので、除去する必要があります。
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Step03
中等度歯周炎
歯周ポケットが 5mm以上~7mm以内の状態です。歯槽骨にまで影響が及んでいるため、歯を押すと動揺が見られます。膿が溜まることもあり、口臭も強くなるのが特徴です。
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Step04
重度歯周炎
歯周ポケットは7mm以上です。歯根が露出してきて、食べ物をかむことがほとんどできません。歯を押すと激しく動くようになり、最悪の場合歯が抜けることも考えられます。
歯周病治療の流れ
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01
歯周病検査・歯磨き指導
歯周病の有無や進行状況を判断するため、歯の安定性や歯周ポケットの深さなどを調べます。基本的な検査結果に基づき、口腔内の現状、将来的なリスク、治療計画をわかりやすく説明いたします。また、セルフケアの質を向上させるために、ブラッシングの指導も行います。
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02
スケーリング・ルートプレーニング(歯石除去)
歯垢や歯石は日々のブラッシングでは取り除くことが難しいため、スケーリング・ルートプレーニング(SRP)が有効です。専門の器具を使用して歯と歯肉の間、そして歯周ポケットの深部の汚れを取り除いていきます。特に歯石には歯垢が多数付着しているため、スケーリング・ルートプレーニングの処置を行えば、口腔内の細菌数が減少し、歯周病の改善につながります。
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03
歯周外科手術(重度歯周病の場合)
重度歯周病の場合、セルフケアやスケーリング・ルートプレーニングだけでは、歯周病の改善が難しいケースがあります。そのような場合は、歯周外科手術をご提案します。具体的にはフラップ手術などです。歯周外科手術を行えば、歯周基本治療では対応できない部分の歯垢や歯石を取り除くことが可能です。
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04
メインテナンス
歯周病治療が完了し、症状が改善しても、歯科医院への定期的な訪問は続けるようにしましょう。なぜなら、歯周病が完全に治ることは無いからです。三か月ほどで歯垢や歯石が蓄積し、放置すると、歯周病の再発リスクが高まります。定期的なメインテナンスを続け、口腔内を清潔な状態に保ち続けましょう。
歯周外科治療とは
当院では歯周病の初期治療を終えた後、歯周ポケットに4mm以上の深さがあった場合は、歯周外科手術をご提案します。主に歯肉を開き、歯周ポケット奥深くの歯垢や歯石を取り除くのが目的です。お口全体の細菌数を減らし、歯茎を健康な状態に戻すことを目指します。
歯周外科治療の目的
歯周外科治療は主に二つの目的があります。一つ目は「歯周病の原因を取り除く」ことです。セルフケア、定期的な歯石除去だけでは、歯周病の改善が見込めない場合に必要となります。歯肉を開き、歯根面を直接見ながら、歯石や感染している組織を取り除いていきます。二つ目が「再発予防に向けた環境作り」です。これは歯周ポケットを浅くしたり、破壊された歯槽骨を再生したりする処置が含まれます。
フラップ手術とは?
フラップ手術は、重度歯周病に対して行う歯周外科治療の一つです。歯肉を部分的に開き、感染源を直接見ながら、歯石や感染組織を取り除くことができます。その後、歯肉を閉じて縫合します。フラップ手術は歯周病の進行を止められるのがメリットです。ただ、再生療法ではないため吸収(破壊)された歯槽骨は回復しません。また術後、歯肉が後退して見た目に影響が出る可能性があります。
フラップ手術の流れ
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Step01
麻酔・切開
歯周ポケットが深い部分に麻酔をし、麻酔が効いたら、歯ぐきを切開していきます。
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Step02
歯ぐきを開く
次に歯ぐきを開き、歯の根を露出させてます。
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Step03
歯石除去
専用の器具を使って詰まっていた歯石を取り除き、歯の根の表面を綺麗に清掃します。
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Step04
縫合・抜糸して終了
歯ぐきを元に戻して傷口を縫います。7〜10日後に抜糸します。
フラップ手術を行う際の注意点
当院ではフラップ手術の前に、患者様の口腔環境やブラッシングの習慣を分析したうえで、正しいセルフケアの方法を指導しています。手術後にブラッシングを怠ったり、精度が拙かったりすると手術跡から細菌が侵入し、病状を悪化させる可能性があります。ぜひ適切なメインテナンスをセットで進めて、フラップ手術を成功に導きましょう。
その他の歯周外科治療
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歯周組織再生療法
歯周病によって破壊(吸収)された歯槽骨を再生するための手術です。特定の成長因子が含まれた薬剤の使用、患者様自身の骨や人工的な骨を移植するなどさまざまな手法があります。
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歯肉切除術
文字通り歯肉を切り取る処置です。歯周病が進行すると歯肉が肥大化します。そのため歯肉切除術で深い歯周ポケットを取り除き、口腔内の細菌数を減少させることを目指します。
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小帯切除術
小帯とは口腔内の頬、舌、上下唇にあるヒダのことです。小帯切除術は舌の運動を改善したり、前歯の間隔が大きくなる正中離開を解消したり、審美性を高めたりするために行われます。
歯周病は治療後のメインテナンスが大切です
歯周病治療後は、お口の中がサッパリとして綺麗な状態になります。しかし、3か月ほどでお口の中の汚れや細菌は再び元の状態に戻ってしまうのです。そのため、治療が終わっても定期的なメインテナンスを続けることが欠かせません。定期的にお越しいただければ、初期段階でトラブルを発見できる可能性も高まります。
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